育児ノイローゼは旦那のせい?事件から考える夫にできること

またも悲しい事件が起こりました。
「授乳で眠れない」長女殺害容疑の市職員 衝動的犯行か(2019年6月14日付朝日新聞デジタル)
詳細は記事を読んでいただければと思いますが、報道による事件概要は以下の通りです。
・新潟県長岡市職員の女(31)が生後3ヶ月の長女を自宅で殺害
・「複数回、床に落とした」と供述
・家族は夫と未就学児の長男を含めた4人
・周囲に育児の疲れを漏らしていた
私は元事件記者ですので、育児ノイローゼをきっかけとした悲しい事件は嫌というほど見てきました。
育児ノイローゼ自体は大きな社会問題の一つですが、逆に言えばさほど珍しくない分、大事と捉えず軽視している風潮があるように思えます。
「また育児ノイローゼか」という感覚があるならそれは、いつどこで起きてもおかしくない、日常にありふれた事件であることの裏返し。
赤ちゃんの泣き声が聞こえてくる隣のお宅が、また育児に全力で奔走しているあなた自身が、いつ当事者になってもおかしくないのです。
今回の事件も、人によっては「またか」と大して気にも留めず、やがて風化していってしまうのかもしれません。
ただ少なくとも、この記事を偶然にでも読み始めたあなたや、その周囲の方々にだけは、当事者になってほしくない。
過去に妻が育児ノイローゼに陥った私自身の経験も踏まえ、この記事にはそんな思いを込めています。
育児ノイローゼは夫のせい?
どんな事情であれ、何の罪もない我が子に手をかける親に同情の余地はありません。
なぜなら、必ず他の選択肢があったはずだからです。
・定期検診の様子はどうだったのか?
・虐待の兆候はなかったのか?
・なぜ自治体は気付けなかったのか?
事件記者としての経験上、報道ではこのような検証が行われます。
どこかに救いの道はなかったのかを考える上で、自治体の行政サービスが適切に行われていたのかを検証することはとても重要なことです。
育児ノイローゼによる事件は行政だけでは防げない
しかし残念ながら、実際その家庭がどのような環境に置かれていたのかまで踏み込める記事はほとんどありません。
せいぜい警察による発表、容疑者の供述、近所住民の声くらいなものであって、その全ては又聞きです。
当事者である母親や、その夫にまで取材することは、ほぼ不可能と言っていいでしょう。
でも事件は家庭内で起こっています。
行政サービスや周囲の支えだけで防げるほど、育児ノイローゼは甘くありません。
定期検診で「眠れない」とこぼすかもしれない。
「育児が嫌になった」と相談することがあるかもしれない。
でも先ほど述べたように、育児ノイローゼは巷にありふれているんです。
自治体へのその手の相談は数え切れません。
その状況下で、「なぜ防げなかったのか」と訴えても、核心からはズレています。
もう一度言います。
事件は「家庭内」で起きているのです。
であるならば、最も身近にいる家族、特に旦那さんの働きが極めて重要であることは言うまでもありません。
過去に取材したケースでは、旦那さんのある一言をきっかけに、「もうどうでもよくなった」と母親が幼い我が子に手をかけてしまったというものもありました。
妻が育児ノイローゼに!そのとき旦那は何をする?
育児ノイローゼによる事件は後を絶ちません。
今年3月には、三つ子のワンオペに疲れた母親による傷害致死事件の裁判をきっかけに、育児ノイローゼやワンオペがクローズアップされたばかりでした。(参照:ハフポスト)
こうした事件が報道されるたびに繰り返されるのは、「旦那さんは何をしていたの?」という反応です。
旦那さんの協力や理解があれば防げたのではないか、という論調には、確かにある程度同意できる部分があります。
予め誤解のないように申し上げておきますが、容疑者である母親を擁護するつもりはありません。
ただ、もしも自分がその旦那さんの立場であったのなら、妻ではなく、誰よりも自分のことを責めているに違いないと思います。
今回の長岡のケースで、どのような家庭環境にあったのか、夫婦関係がどうだったのかは全くわかりません。
私のような部外者がとやかく言うものでもないと思います。
でも、その旦那さんが抱えているであろう「自責の念」にこそ、社会問題となっている育児ノイローゼ解決のヒントが隠されているのではないでしょうか?
そこに切り込んでくれる続報が出ることを私は望みます。
育児ノイローゼは旦那の言動が鍵
冒頭で、私の妻が育児ノイローゼに陥った経験があると書きました。
私が新聞記者をしていた頃、妻はいわゆるワンオペ状態でした。(詳しくはプロフィールページをご覧ください)
元々妻は明るい性格で、家を空ける事の多い私に対しても全く文句を言わず、初めての子育てに奮闘していました。
同僚の奥さんが育児ノイローゼになったという話はよく聞きましたが、まさかうちの妻に限って育児ノイローゼになるなんて思ってもいませんでした。
だから「私、鬱かも…」と軽く相談されたときに、「疲れてるだけで、大丈夫だろ」と真摯に受け止めず、軽く流してしまったこともありました。
でもある日、妻が真夜中に真っ暗な部屋で1人涙を流している姿を見て、私は「ただ事ではない」と危機感を覚えたのです。
もしもこの時の対応を間違えていたら…
私の一言が引き金となって、我が家でも同じような悲しい事件が起きていた可能性は十分にあったと思います。
子供に手をあげる気持ち
男の私としては信じられないのですが、ある虐待のニュースを見て、妻は「子供に手をあげる気持ちがわかる」と言いました。
恐らく多くのお母さん方が同意するのではないでしょうか?
男性は理解できないかもしれませんが、それだけ子育てというのは過酷で、いらだち、やるせない気持ちになるのです。
今回の長岡の事件も、母親による衝動的な犯行の可能性が高そうです。
市職員として人望のあった方ですから、極悪非道な殺人犯であるとは到底思えません(繰り返しますが、擁護をしているわけではありません)。
そんな方ですら、突発的に我が子を殺めてしまう怖さが育児ノイローゼにはあるのです。
旦那さんの対応次第
間違っても旦那さんを責めるわけではありません。
ここから先は推測の域を出ないのですが…
もしも旦那さんが何か違った対応をしていたら?
たった一言、救いの声を掛けてあげられていたら?
奥さんのヘルプにもっと気付いてあげられていたら?
同じ子育て中の父親として、想像するだけで胸が痛くなるのです。
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