パタハラは社員としてどう対策すべき?育休取得前後にできる3つのこととNG行為
男性社員の育休取得をきっかけに、職場で嫌がらせが起こるいわゆる「パタハラ」。
2019年6月に起きた大手化学メーカー「カネカ」の騒動をきっかけに、社会問題化されました。
男性の育休取得は国を挙げて推進している課題です。
こうした具体的な問題を機に、企業としての対応は少しずつですが、整ってきている印象があります。
では、私たち「社員」サイドから見て、パタハラ被害に遭わずスムーズに育休を取得するには、どうすればいいのでしょうか?
また、もしも自分がパタハラ被害にあってしまったらどう対処すれば良いのでしょうか?
本記事では、元新聞記者で現役子育て世帯の筆者が、専門家の分析も交えてパタハラ対策についてまとめています。
- 現在育休を取得している男性
- これから育休取得を考えている男性
- 身近な職場でパタハラに近い事例が出た経験のある方
こうした方々には大きなヒントが得られる内容となっているはずです。
是非最後までご覧ください。
パタハラ問題とは?カネカに見る男性社員の育休実態
男性の育休取得は、国を挙げて推し進めている少子化対策の一つです。
2019年には三菱UFJ銀行が育休取得の義務化を決めたように(参照:日経新聞)、近い将来、男性も女性も育休を取るのが当たり前な世の中になるでしょう。
そんな中で起きたカネカの騒動は、多くの企業で「パタハラ対策」を具体化させる絶好の機会となりました。
時代の流れは確実に変わっていますが、カネカの例のように、残念ながら男性社員の育休取得について柔軟に対応できる企業ばかりではありません。
人手不足が叫ばれている今、大手・中小を問わず、いまだに育休取得に当たってのハードルが高い、もしくは育休取得自体を認めない企業も存在するのです。
では、パタハラの実態とはどのようなものでしょうか?
カネカの例をみていきます。
カネカのパタハラ問題とは?
カネカのパタハラ問題は、2019年6月に同社元社員の妻によるTwitterへの投稿がきっかけで起こりました。
改めて決意
夫日系一部上場企業で育休とったら明けて2日で関西に転勤内示、私の復職まで2週間、2歳と0歳は4月に転園入園できたばかり、新居に引越して10日後のこと。
いろいろかけ合い、有給も取らせてもらえず、結局昨日で退職、夫は今日から専業主夫になりました。私産後4か月で家族4人を支えます
— パピ_育休5月復帰 (@papico2016) 2019年6月1日
育休明け直後に転勤を命じられ、有給も使えず、結果的に退職に追い込まれた、という投稿です。
この時点では企業名は伏せていましたが、下記の通り、直後の投稿ではカネカのキャッチフレーズを明記しています。
ポイントでした。私たちは、転勤は応じるとしても生活が落ち着いていないので(社宅から建てたばかりの新居に引越して10日後)せめて1か月延ばしてほしい、と上司にお願いしましたが、聞き入れてもらえず。5月16日付で転勤、は絶対。4月23日の事でした。#カガクでネガイをカナエル会社
— パピ_育休5月復帰 (@papico2016) 2019年6月1日
カネカは後に、「この投稿は元社員の妻によるものだ」と正式に認めました。
その後の経緯は以下のとおりです。
◆6月2日 カネカのウェブサイトから育休に関するページが削除。Twitter上ではさらに大騒動に。
◆6月3日 メディア報道。カネカ広報部は「当事者が社員かどうかわからないのでコメントできない」と対応。
◆6月4日 メディアが、カネカの社長名で従業員へ送られた「転勤は見せしめでない」という趣旨のメールを記事化。(参照:日経ビジネス)
◆6月6日 カネカがウェブサイトで「当社元社員ご家族によるSNSへの書き込みについて」と題して公式コメント。対応に問題がなかったとする内容で、Twitterはさらに炎上。
このように、元社員とカネカの主張には食い違いが生じているので、事実はわかりません。
元社員の言うように、育休をとった「嫌がらせ」として転勤命令が出たのかもしれないし、カネカの主張する通り、転勤は育休取得前から決まっていたのかもしれません。
ただ一つ、今回の騒動で間違いなく言えるのは、育休取得直後の人事異動があったことで、「パタハラ」という問題が大きくクローズアップされる事態になった初めての機会だということです。
パタハラ対策はどうすればいい?社員ができる3つのこと
今回のカネカの一件が「パタハラ」に該当するのかどうかは、今のところ定かではありません。
しかし、これから育休取得を考えているのなら、私たち社員としてもできるだけスムーズに制度を利用できるよう、努力しなくてはなりません。
また、万が一に備え、パタハラの被害に遭わない対策も考える必要があります。
そもそも、育休制度は社員に認められた「権利」です。
各社で定められたルールに則れば、育休取得を制限されたり、育休を理由に嫌がらせを受けたりする言われはありません。
そこで筆者は、「権利」を正しく使うために社員にできることは、大きく分けて3つあると考えています。
- 育休取得前後の根回し
- 自身のスキル向上
- 上司・同僚との信頼構築
それぞれ具体的に見ていきましょう。
育休取得前後の「根回し」
すごく言い方が嫌らしいですが、関係各所へ事前に「根回し」しておくことで、かなりスムーズに事が運ぶようになるはずです。
具体的には、実際に育休を取得するかなり前の段階から、直属の上司や同僚に相談しておくのです。
当たり前ですが、中長期的に持ち場を離れるのであれば、引き継ぎやカバー人員の確保にはそれなりの時間を要します。
いくら育休が社員の「権利」だとしても、物理的に業務に不都合を与えてしまうのであれば、組織としては快く認めるわけにはいきません。
ですから、育休取得を決めたのであれば、早い段階から上長の許可を得る努力をする必要があるのです。
育休の意向は同僚にも伝えよう
また、育休取得の意向については、上司だけでなく同僚にも直接伝えておくと良いでしょう。
そうすることで、「半年後に○○さんは育休だ」という空気感ができ、徐々に既成事実化していくのです。
育休の申し出のタイミングとしては、早ければ早いに越したことはありません。
その上で、実際に育休に入るまでにきちんとした成果を出していれば、上長としても「あいつは頑張っているからな」と育休を後押ししてくれることでしょう。
自身のスキル向上
根性論のようになってしまいますが、どんな人でも代えの効かない存在になることが、一番手っ取り早いかもしれません。
要は、男性が育休を取ることに対して嫌悪感を抱くような上司でさえも、文句の言えない実績を残すのです。
そうすれば、例え上司から嫌われようとも、外されたり飛ばされたりすることはまずあり得ません。(※注釈:今回のカネカ元社員の仕事ぶりについては知りませんし、文句を言いたいわけではありません)
育休は社員にとってれっきとした「権利」ですが、少なからずほかの人に負担を掛けることは間違いありません。
だったらその分、稼働中に会社に貢献するのは当然のこと。
育休をきっかけに、仕事でも家庭でもなくてはならない存在を目指しましょう。
上司・同僚との信頼構築
万が一パタハラの被害に遭ったら、1人で悩まず周囲に相談しましょう。
特に多くの大企業の場合、人事部や労組のトップはいわゆる「出世コース」、つまり会社側の人間です。
真っ向からそこに疑義を伝えても、社員側の利益になる回答が得られるとは思えません。
ですから、もしも嫌がらせを受けるような事態になったら、まずは信頼のおける上司に相談すべきです。
直近で育休を実際に取得した同僚がいれば、その方に相談してみるのも手ですね。
会社に属している以上、従業員の立場はどうしても下になってしまいます。
ですが、1人で解決しようとせず、素直に助けを求めるのも大切な危機管理の一つです。
パタハラ対策より重要?被害に遭っても絶対にやってはいけないこと
もしパタハラの被害に遭ってしまったとしても、絶対にやるべきではないことがあります。
それは、SNSへの投稿です。
SNS投稿がNGな理由
これは私の元新聞記者としての経験則ですが、今回のカネカのパタハラ問題をきっかけに、SNSでは「俺もパタハラやられた!」「うちの会社でもパタハラがあった!」と、被害を訴える投稿は続出するはずです。
ですが、はっきり言って被害をSNSで訴えたところで、事態は何も変わりません。
むしろ他の社員から白い目で見られることになるのは目に見えています。
今回カネカが真っ向から事実を否定しているように、SNSで炎上した程度で会社が決定を覆すことなど、まずあり得ません。
退職後の腹いせだとしても、場合によっては会社から法的措置に出られる可能性さえ十分にあります。
カネカ元社員のように投稿が炎上し、共感を得る「RT」や「いいね!」がいくら増えたとしても、事態は何も変わらないことは理解しておきましょう。
パタハラ被害に耐えられなくなったらどうする?
ここまで、社員としての「パタハラ対策」について述べてきました。
しかし、パタハラに限ったことではありませんが、対会社との労使問題を個人で対処するのには限界があります。
もしも本当に深刻な被害に遭ってしまったら、専門家に相談するか、いっそのこと退職することをおすすめします。
パタハラ問題の専門家に相談する
「パタハラ」は最近になってクローズアップされたばかりの労働問題です。
「パワハラ」や「セクハラ」などの労働問題で実績のある弁護士か社労士に相談するといいでしょう。
パタハラをきっかけに退職する
そもそも育休という社員の権利をめぐって揉めるような会社なら、そこまで残留にこだわる必要はないかもしれません。
ただし、今回のカネカ元社員が有給消化も認められなかったように、退職をめぐったトラブルが出ることも少なくないはずです。
最近は、会社との退職手続きを専門家が代行してくれる「退職代行」が成果を収めています。
パタハラのような労使間トラブルをきっかけに退職するなら、専門家の助言でより有利な条件を勝ち取ることができるかもしれません。
スムーズな退職手続きを進めるためにも、一度無料相談してみると良いでしょう。
パタハラ対策まとめ!社員としてできることをやろう
今回はカネカの一例を元に、パタハラ問題について真剣に考えてみました。
男性の育児参加は国を挙げて進めている少子化対策です。
会社として育休を認めているのであれば、それは社員にとって立派な「権利」。
胸を張って取得するべきだし、周囲も快く送り出してあげるべきです。
ただし、万人が万人、大手を振って歓迎しているわけではないのも事実。
今回紹介した、
- きちんと根回しする
- 文句を言われない実績を残す
- 悩みは周囲に相談する
という3つの対策を参考にすれば、男性の育休取得も多少スムーズになるはずです。
また、万が一パタハラ被害に遭っても、SNSに投稿するような真似は絶対に避けましょう。
SNSで騒ぎになったところで事態が変わるわけではありません。
むしろ自身の立場を苦しめる結果になってしまいます。
それよりも、専門家に相談するなどの対応をする方が賢明です。
スムーズな育休取得に向け、私たち社員としてもできる限りの努力をしたいですね。
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